プロフィールとメッセージ

研究内容の紹介

研究分野 地球表層システム学,サンゴ礁学,地球規模変動

石西礁湖サンゴ群集

サンゴ礁は,様々な階層で生物と地形,人が相互作用しあう共生・共存系です.現在このサンゴ礁は,ローカルな環境ストレスと地球温暖化によって,劣化・破壊の危機にあります.サンゴ礁は,CO2濃度上昇,温暖化,海面上昇という,地球温暖化シナリオのすべての要因の影響を真っ先に受けます.地球温暖化に対するサンゴ礁の応答を,フィールドと実験室において解明して,サンゴ・サンゴ礁自身が記録している環境変動・人間活動影響の記録を読み取り,複合ストレスに対する応答モデルを構築します.それに基づいて,適切なストレス制御と再生策を提案し,人とサンゴ礁の新たな共生系を構築することを目指します.研究は,フィールドをベースに観測・試料採取を行い,実験室で採取試料の分析を行います.


年輪採取

フェイズシフトと温暖化応答:ストレスに対して,サンゴ礁が藻場に変わってしまうフェイズシフト(生態系の相転移)が,様々なサンゴ礁で確認されています.これに温暖化による白化や石灰化抑制が重なり,サンゴ礁は現在危機的な状況にあります.一方で,サンゴ礁はストレスに対して適応する力ももっています.現在・過去のサンゴ群集分布と環境との関係に基づいて,フェイズシフトのプロセスや閾値,復元力を明らかにします.また,サンゴの適応能力を,白化前後の群集の観察や実験から明らかにして,将来の温暖化に対する応答を予測します.


ツバル藻場

古環境変動:将来の地球規模変動を正しく予測するためには,過去に起こった変動を高い時間精度で復元して,地球システムの変動(フィードバック)メカニズムを明らかにすることが重要です.サンゴ礁には,過去の環境変動が高い時間分解能で記録されています.たとえばサンゴ礁のボーリングコアから,後氷期の海面変動を復元することができます.また,サンゴ骨格年輪の酸素同位体比や微量金属の変化を測定することによって,過去数100年間の海面水温と塩分を,月〜週単位で復元することができます.地球温暖化に伴うENSOやインド洋ダイポールのモード変動,水温・降水量変化を,インド洋.パラオ諸島,沖ノ鳥島のサンゴ年輪の解析を進めています.


クレスト号

炭素循環:サンゴ礁は,高い群集代謝(光合成,呼吸,石灰化)によって,大きなCO2フラックス(大気と海水とのCO2のやり取り)を持っています.一方,大気CO2濃度上昇によって,石灰化抑制や溶解が予想されています.本研究室では,海洋の炭酸系の測定可能なパラメーター(CO2,アルカリ度,全炭酸,pH)のすべてを連続的に高精度で測定できるシステムを開発することに成功しました.これを用いて,サンゴ礁の群集代謝に伴うCO2 フラックスや, CO2濃度増加に伴う群集代謝と溶解過程を,現場と実験室で測定して,CO2循環におけるサンゴ礁の役割を評価します.


Funafuti島

海面上昇によって水没する環礁州島:環礁州島は,サンゴ礁の上に打ち上げられた砂礫が作る標高1〜2mの低平な島です.島の形成と維持にはサンゴや有孔虫などの生物が石灰質の殻をつくる生物過程や,砂の移動・堆積過程,海面変動,さらにはそこに住む人々の伝統的な土地・植生管理を総合的に解明することが必要です.考古学者と協力して,地形調査や発掘された遺物の分析,堆積物,サンゴ年輪の分析など地球環境学的な調査・分析を行い,地形形成や環境変動と人間居住の関係,人々の資源利用の歴史を探ります.さらに,現在の人間活動がサンゴ礁にどれくらいの負荷を与えているかを,リモートセンシング,堆積物やコアの分析,島の経済調査に基づいて評価し,生態工学的な環礁州島再生の方策を提案します.


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