サンゴ礁とは

白化するサンゴ礁

 1998年9月 白化したエダコモンサンゴ(石垣島)

1998年9月 白化したエダコモンサンゴ(石垣島)

サンゴは緑や茶,黄色など様々な色をしていますが,これはサンゴ体内の共生藻の色です。 サンゴはストレスを受けると体内の共生藻を体外に放出してしまいます。 共生藻を体外に放出したサンゴは,サンゴの透明な体を通して石灰質骨格の色が透けて白くなってしまいます。 これがサンゴの白化です.白化してもサンゴはまだ生きていますが,やがて共生藻からエネルギーを得られなくなったサンゴは死んでしまいます。

 

1997年から1998年にかけて,世界中のサンゴ礁で次々と白化が起こりました。 この年に起こったエルニーニョに伴っていつもの年よりも2〜4度水温の高い海域が熱帯の海を移動していったからです。 琉球列島でも1998年7月から9月にかけて,これまで見たこともないような白化が全域で見られました。

 

私たちは偶然,白化の直前の1998年5月に石垣島で,総延長3.2kmにもなるサンゴ礁を横切る5本の測線で,サンゴの分布を調べていました。 白化中の9月に急遽同じ測線でサンゴの分布を再度調べたところ,生きているサンゴが半分になってしまったこと,生き残ったサンゴもその半分は白化していることがわかりました。 白化のようなイベントが起こると,それとばかりにたくさんの調査や研究が行われますが,それ以前の状態と比較しなければ本当のことはわかりません。 私たちの調査は,そうした意味で大変貴重なデータを提供してくれます。

 

その後,私たちは同じ測線で追跡調査を8回行いました。 1年間は変化がなかったのですが,白化後1年目から一部のサンゴで生き残ったサンゴがどんどん成長を始め,2年目には白化前より規模が大きくなった群集も見られました。 さらにサンゴの種によって,白化せずにがんばったもの,白化したけれどその後共生藻を取り戻したもの,白化して死滅してしまったがその後の回復が早かったもの,回復できずに死滅してしまったものなど,様々だったことがわかりました。 また同じ種でも,白化前の群集の規模が小さいものは回復できずに死滅してしまったこともわかりました。 この繰り返し調査によって,白化に対するサンゴの応答は,種と群集の規模によって異なることがわかりました。

 

ここで用いた方法は,新しい測定機器を使ったのでも,複雑な計算でもありません。 ただひたすら同じ測線に沿ってサンゴの分布を繰り返し記載しただけです。 こんな基本的な調査でも,環境変動に対するサンゴ群集の死滅と回復の仕組みについて重要な知見が得られました。


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