サンゴ礁とは

大気二酸化炭素とサンゴ礁

 石垣島サンゴ礁で二酸化炭素連続観測を行っているクレスト号

石垣島サンゴ礁で二酸化炭素連続観測を行っているクレスト号

サンゴ礁における光合成は大気二酸化炭素を有機物として固定する過程ですが,その逆反応である呼吸によって固定された二酸化炭素は放出されます。 炭酸カルシウムの骨格を作る石灰化は固定のように思えますが,実際には海洋を酸性化して二酸化炭素が放出され易くなります。 実際のサンゴ礁で,これらの過程がどのように働いているか,それに伴ってサンゴ礁の二酸化炭素がどのように変動しているかについて,これまで実証的に明らかにされたことはありませんでした。 それは,これまでの海の二酸化炭素計測装置は大がかりで大型の調査船でしか測定できなかったからです。 大きな調査船は,サンゴ礁のような浅瀬に入っていくことは不可能でした。

 

私たちは,人の手でも持てるようなコンパクトな二酸化炭素計測装置を新たに開発して,サンゴ礁海水の二酸化炭素濃度の変動を世界で初めて観測することに成功しました。 さらにこの装置を琉球列島石垣島では小型船に搭載してその船をサンゴ礁に係留して,パラオ諸島ではサンゴ礁の海底に水没させて設置して,それぞれ1年間二酸化炭素を連続観測することに成功しました。

 

その結果,サンゴ礁では昼は光合成によって海水中の二酸化炭素濃度は大気の3分の1ほどに,夜は呼吸によって倍近い濃度にと大きな日周変動していることがわかりました。 私たちが計測をおこなったサンゴ礁では,全体としては光合成が呼吸や石灰化にまさっており二酸化炭素濃度が低めである,つまり大気二酸化炭素の吸収源になっていることがわかりました。

 

この結果はこれまでの学会の常識,サンゴ礁では石灰化の働きで二酸化炭素が放出されているという考えと正反対のもので,サンゴ礁は吸収源か放出源かという論争が起こりました。 その後,いろいろなサンゴ礁で調査が行われ,サンゴ礁の様々な場や条件によって,二酸化炭素が吸収されたり放出されたりしていることが明らかになりました。 しかも次に述べるサンゴ礁の白化の際には,サンゴ礁の光合成ポテンシャルが著しく減退して,二酸化炭素吸収だったサンゴ礁も放出に変わってしまったのです。 サンゴ礁は石灰化が起こっているから二酸化炭素を放出しているはずという机の上の結論から,現場での測定でいろいろなことがわかってきました。


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